【労働関連改正法】2022年に対応すべき改正法③ ~公益通報者保護法~
1 公益通報者保護法の改正
公益通報者保護法は、平成18年に施行された法律で、労働者が、公益のために通報を行ったことを理由として解雇等の不利益な取扱いを受けることのないよう、どこへどのような内容の通報を行えば保護されるのかという制度的なルールを明確にするものです。
同法は、①事業者自ら不正を是正しやすくするとともに、安心して通報を行いやすくし、②行政機関等への通報を行いやすくし、③通報者がより保護されやすくする、という観点から、令和2年6月に改正され、令和4年6月1日より施行されることになりました。
2 改正内容
(1)事業者自ら不正を是正しやすくするとともに、安心して通報を行いやすくするための改正
ア 公益通報対応体制の整備と公益通報対応業務従事者の指定
改正法により、従業員の数が300人を超える事業者は、公益通報対応体制の整備と公益通報対応業務従事者の指定が義務付けられました(法11条1項、2項)。
なお、従業員の数が300人以下の事業者は、努力義務となります(同条3項)。
イ 刑事罰のある守秘義務
公益通報対応業務従事者又は公益通報対応業務従事者であった者は、正当な理由がなく、その公益通報対応業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるものを漏らしてはいけません(法12条)。
この守秘義務に違反した場合、30万円以下の罰金が科せられます(法21条)。
(2)行政機関等への通報を行いやすくするための改正
ア 行政機関等への通報が保護されるための要件の緩和
「通報対象事実が生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合」に加え、「通報対象事実が生じようとしていると思料し、かつ、通報者の氏名、住所、通報対象事実の内容等を記載した書面を提出する場合」においても、公益通報が保護されることとなりました(法3条2号)。
イ 報道機関等への通報が保護されるための要件の緩和
上記「相当な理由」があることを前提に、次の2点がある場合についても、公益通報が保護されることとなりました。
- ① 事業者に対し通報をすれば、当該事業者が、当該通報者について知り得た事項を、当該通報者を特定させるものであることを知りながら、正当な理由がなく漏らすと信ずるに足りる相当の理由がある場合
- ② 生命若しくは身体に対する危害又は財産に対する損害(回復することができない損害又は著しく多数の個人における多額の損害であって、通報対象事実を直接の原因とするものに限る。)が発生し、又は発生する急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある場合
(3)通報者がより保護されやすくするための改正
ア 保護対象者の拡大
通報前1年以内に退職した者及び役員が、保護の対象として追加されました(法2条1項)。
イ 通報対象事実の拡大
改正前は、刑事罰の対象となる犯罪行為の事実のみでしたが、行政罰(過料)の理由となる事実が、通報対象事実として追加されました(法2条3項)。
ウ 保護の内容の拡大
通報を理由とする退職金の不支給の禁止が明示され(法5条1項)、通報者への損害賠償請求の禁止が追加されました(法7条)
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