下請法
親事業者の遵守事項(有償支給原材料等の対価の早期決済・割引困難な手形の交付・不当な経済上の利益の提供要請・不当な給付内容の変更、やり直しの禁止)
1.有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止
第4条第2項第1号
2 親事業者は,下請事業者に対し製造委託等をした場合は,次の各号(役務提供委託をした場合にあつては,第1号を除く。)に掲げる行為をすることによつて,下請事業者の利益を不当に害してはならない。
① 自己に対する給付に必要な半製品,部品,附属品又は原材料(以下「原材料等」という。)を自己から購入させた場合に,下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに,当該原材料等を用いる給付に対する下請代金の支払期日より早い時期に,支払うべき下請代金の額から当該原材料等の対価の全部若しくは一部を控除し,又は当該原材料等の対価の全部若しくは一部を支払わせること。
第4条第2項第1号
有償で支給した原材料等の代金を別途下請事業者に払わせることは可能ですが、この場合も、下請代金の支払期日より先に支払わせることはできません。
2.割引困難な手形の交付の禁止
第4条第2項第2号
2 親事業者は,下請事業者に対し製造委託等をした場合は,次の各号(役務提供委託をした場合にあつては,第1号を除く。)に掲げる行為をすることによつて,下請事業者の利益を不当に害してはならない。
② 下請代金の支払につき,当該下請代金の支払期日までに一般の金融機関(預金又は貯金の受入れ及び資金の融通を業とする者をいう。)による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること。
第4条第2項第2号
公正取引委員会及び中小企業庁によると、手形期間が120日(繊維業は90日)を超える手形は、「割引を受けることが困難であると認められる手形」に該当するとしています。
3.不当な経済上の利益の提供要請の禁止
第4条第2項第3号
2 親事業者は,下請事業者に対し製造委託等をした場合は,次の各号(役務提供委託をした場合にあつては,第1号を除く。)に掲げる行為をすることによつて,下請事業者の利益を不当に害してはならない。
③ 自己のために金銭,役務その他の経済上の利益を提供させること。
第4条第2項第3号
下請事業者の金銭・労働力の提供が下請事業者の直接の利益につながることの根拠を明確にしないで提供を要請することは,第3号に該当するおそれがあります。
例えば、親事業者が行う年末セール(下請事業者の製品も販売される)の販売活動の手助けのため、下請事業者から無償で人員を派遣してもらう場合には、下請事業者が人員を派遣することでどれだけの利益が見込めるかについて、合理的根拠を明示し、その利益が、人員の派遣により発生する不利益を上回ることを明確に示して、下請事業者の同意を得て人員を派遣させることが必要です。
4.やり直しの禁止
第4条第2項第4号
2 親事業者は,下請事業者に対し製造委託等をした場合は,次の各号(役務提供委託をした場合にあつては,第1号を除く。)に掲げる行為をすることによつて,下請事業者の利益を不当に害してはならない。
④ 下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに,下請事業者の給付の内容を変更させ,又は下請事業者の給付を受領した後に(役務提供委託の場合は,下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした後に)給付をやり直させること。
第4条第2項第4号
親事業者が発注を取り消した場合、親事業者は、下請事業者が当該給付の目的物を作成するために要した費用を全額負担する必要があります。
なお、下請事業者が当該給付を行うために必要な機器と人員を手配している場合には、下請事業者に可能な範囲は解約してもらい、解約できずやむを得ず負担することとなった部分についてのみ、親事業者が費用を負担すればよいことになります。