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私は、会社の株式の80%を有しており、また、代表取締役を・・・

私は、会社の株式の80%を有しており、また、代表取締役を務めています。私のほかの株主は、家族や友人など3人いますが、実はこれまで5年間株主総会を開いたことがありません。本業の調子が良いこともあり、過去の株主総会の不備をなんとかできないものかと悩んでおります。良い方法がありますか?

弁護士の回答

株主総会を開催し、過去の決議について追認する決議を行いましょう。

株主総会は年1回は開かなくてはなりません(会社法296条1項)。しかし、家族経営などの株式会社では、株主総会を開いていない例も少なくありません。このような場合には、後々、株主間の仲が悪くなった場合やほかから株主を招く場合に、トラブルとなる懸念がございます。

実際に、取締役の報酬に関して裁判になった例がございます。取締役の報酬は、定款に金額等の規定がないときには、その支払前に、株主総会の決議によって決められなければなりません(会社法361条)。

1つ目の裁判は、株主総会の決議に基づかずに取締役の報酬が支払われたものの、事後的にその取締役の報酬について株主総会の決議がなされたという事案です。この場合について、最高裁は、お手盛りの弊害を防止という会社法361条の趣旨目的を没却するような特段の事情があると認められない限り、その役員報酬の支払は株主総会の決議に基づく適法有効なものになるというべきと判断しました(最高裁判決平成17年2月15日)。原則としては事前に取締役の報酬について株主総会決議をしなくてはならないものの、トラブルになる前に過去に遡って株主総会決議を行うべきでしょう。

2つ目の裁判は、過去に代表取締役であった者がその任期中に株主総会の決議を得ることなく役員報酬を受けていたとして、会社法423条1項に基づき、役員報酬相当額の損害賠償が請求された事案です。この場合について、東京地裁は、「株主総会決議を経ないで取締役の報酬が支払われた場合であっても株主総会決議を経た場合と同視できる事実が存在する場合、すなわち、株主総会決議に代わる全株主の同意があった場合には、上記趣旨を全うすることができるのであるから、当該決議の内容等に照らして上記規定の趣旨目的を没却するような特段の事情が認められない限り、当該役員報酬の支払は適法有効なものになるというべきである。」として、本件の取締役報酬の支払いは有効であると判断しました(東京地裁判決平成25年8月5日)。

ただし、この判断の前提として東京地裁は、全株主による同意があったことについて、株主が役員報酬支払について直ちに異議を申し出なかったことなどの具体的な事情を認定しています。そのため、具体的な事情次第では、ご質問の大株主がいるような会社で株主総会決議がない場合には、取締役報酬の支払いが無効とされるおそれも十分にございます。
株主総会を直ちに開催し、過去の決議について追認する決議を行いましょう。

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