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従業員の過労死について

それでは、今日から、ロースクール生のやまびしさんとひとすけ君と一緒に、ニュースで取り上げられている事件について、法的な観点から深く学んでいこうと思います。
よろしくお願いします。初回ということで緊張しています。
こちらこそよろしくお願いします。今日のテーマは何ですか。
今回取り上げるテーマは、企業における過労死です。ここ最近は、よくニュースで取り上げられているけれど、この問題は、昨今始まったことではありません。過労死について、過去に訴訟になった事件について、説明して下さい。
はい、いわゆる電通過労死事件(最高裁平成12年3月24日判決)は、「使用者は、その雇用する労働者に従事させる業務を定めてこれを管理するに際し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負う」と述べています。
この判例は、どういった事実を根拠に会社の責任を認めたのかな。
この判例は、被害者が長時間にわたる残業を行わざるを得なかった状態にあったこと、上司が死亡した被害者の業務の量を調整しなかったこと、被害者の健康状態が悪化していたことを知りながら上司が負担軽減措置を取らなかったこと、といった事実から、会社の損害賠償責任を肯定しています。
長時間の残業を行わせれば、会社の責任が生じることはわかりますが、実際にどの位の残業時間で、という目安はあるのでしょうか。
過労死が、業務上の疾病として労働災害に認定されるかについて、行政上の通達が出されています(平成13年12月12日基発1063号)。 その中では、業務により脳や・心臓疾患が発症したと認定する目安として、発症前1ヶ月間におおむね100時間、発症前2~6ヶ月間に渡り1月おおむね80時間を越える時間外労働が行われたことが、目安となっています。
過労死についての裁判では、どういった点が主な争点になるのかな。
まずは、業務に起因して病気が発症したり死亡したか、という業務起因性が一大争点です。
業務起因性については、さっき説明した通達に示された基準が役に立ちます。通達なので、裁判所における業務起因性の判断を直接拘束するわけではないが、実務的には、重要な目安とされています。それでは、業務起因性以外では、どういう点が争点となるかな。
他の争点としては、基礎疾患と業務上の疾病の競合があります。 従業員の基礎疾患(業務とは関係なくかかっていた病気)が死亡原因の一部になっていた場合には、過失相殺(民法722条2項類推適用)により、基礎疾患を考慮して、賠償額を減額したという判例もあります(最一小判平成20年3月27日 NTT東日本北海道支店事件)。
大分整理できたようだね。今日はこれくらいにして、また次回。次回も引き続き過労死を取り扱うけど、次回は、企業が過労死による賠償責任との関係で、どのような点を注意すべきか、という観点から議論していこう。

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