信託法
受益者等
受益権の取得
第八十八条
信託行為の定めにより受益者となるべき者として指定された者(次条第一項に規定する受益者指定権等の行使により受益者又は変更後の受益者として指定された者を含む。)は、当然に受益権を取得する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
- 2受託者は、前項に規定する受益者となるべき者として指定された者が同項の規定により受益権を取得したことを知らないときは、その者に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
受益者指定権等
第八十九条
受益者を指定し、又はこれを変更する権利(以下この条において「受益者指定権等」という。)を有する者の定めのある信託においては、受益者指定権等は、受託者に対する意思表示によって行使する。
- 2前項の規定にかかわらず、受益者指定権等は、遺言によって行使することができる。
- 3前項の規定により遺言によって受益者指定権等が行使された場合において、受託者がこれを知らないときは、これにより受益者となったことをもって当該受託者に対抗することができない。
- 4受託者は、受益者を変更する権利が行使されたことにより受益者であった者がその受益権を失ったときは、その者に対し、遅滞なく、その旨を通知しなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
- 5受益者指定権等は、相続によって承継されない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
- 6受益者指定権等を有する者が受託者である場合における第一項の規定の適用については、同項中「受託者」とあるのは、「受益者となるべき者」とする。
委託者の死亡の時に受益権を取得する旨の定めのある信託等の特例
第九十条
次の各号に掲げる信託においては、当該各号の委託者は、受益者を変更する権利を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
- 一委託者の死亡の時に受益者となるべき者として指定された者が受益権を取得する旨の定めのある信託
- 二委託者の死亡の時以後に受益者が信託財産に係る給付を受ける旨の定めのある信託
- 2前項第二号の受益者は、同号の委託者が死亡するまでは、受益者としての権利を有しない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
受益者の死亡により他の者が新たに受益権を取得する旨の定めのある信託の特例
第九十一条
受益者の死亡により、当該受益者の有する受益権が消滅し、他の者が新たな受益権を取得する旨の定め(受益者の死亡により順次他の者が受益権を取得する旨の定めを含む。)のある信託は、当該信託がされた時から三十年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。
信託行為の定めによる受益者の権利行使の制限の禁止
第九十二条
受益者による次に掲げる権利の行使は、信託行為の定めにより制限することができない。
- 一この法律の規定による裁判所に対する申立権
- 二第五条第一項の規定による催告権
- 三第二十三条第五項又は第六項の規定による異議を主張する権利
- 四第二十四条第一項の規定による支払の請求権
- 五第二十七条第一項又は第二項(これらの規定を第七十五条第四項において準用する場合を含む。)の規定による取消権
- 六第三十一条第六項又は第七項の規定による取消権
- 七第三十六条の規定による報告を求める権利
- 八第三十八条第一項又は第六項の規定による閲覧又は謄写の請求権
- 九第四十条の規定による損失のてん補又は原状の回復の請求権
- 十第四十一条の規定による損失のてん補又は原状の回復の請求権
- 十一第四十四条の規定による差止めの請求権
- 十二第四十五条第一項の規定による支払の請求権
- 十三第五十九条第五項の規定による差止めの請求権
- 十四第六十条第三項又は第五項の規定による差止めの請求権
- 十五第六十一条第一項の規定による支払の請求権
- 十六第六十二条第二項の規定による催告権
- 十七第九十九条第一項の規定による受益権を放棄する権利
- 十八第百三条第一項又は第二項の規定による受益権取得請求権
- 十九第百三十一条第二項の規定による催告権
- 二十第百三十八条第二項の規定による催告権
- 二十一第百八十七条第一項の規定による交付又は提供の請求権
- 二十二第百九十条第二項の規定による閲覧又は謄写の請求権
- 二十三第百九十八条第一項の規定による記載又は記録の請求権
- 二十四第二百二十六条第一項の規定による金銭のてん補又は支払の請求権
- 二十五第二百二十八条第一項の規定による金銭のてん補又は支払の請求権
- 二十六第二百五十四条第一項の規定による損失のてん補の請求権
受益権の譲渡性
第九十三条
受益者は、その有する受益権を譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
- 2前項の規定にかかわらず、受益権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の信託行為の定め(以下この項において「譲渡制限の定め」という。)は、その譲渡制限の定めがされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対抗することができる。
受益権の譲渡の対抗要件
第九十四条
受益権の譲渡は、譲渡人が受託者に通知をし、又は受託者が承諾をしなければ、受託者その他の第三者に対抗することができない。
- 2前項の通知及び承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、受託者以外の第三者に対抗することができない。
受益権の譲渡における受託者の抗弁
第九十五条
受託者は、前条第一項の通知又は承諾がされるまでに譲渡人に対し生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。
共同相続における受益権の承継の対抗要件
第九十五条の二相続により受益権が承継された場合において、民法第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該受益権を承継した共同相続人が当該受益権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該受益権を承継した場合にあっては、当該受益権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして受託者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が受託者に通知をしたものとみなして、同法第八百九十九条の二第一項の規定を適用する。
受益権の質入れ
第九十六条
受益者は、その有する受益権に質権を設定することができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
- 2前項の規定にかかわらず、受益権の質入れを禁止し、又は制限する旨の信託行為の定め(以下この項において「質入制限の定め」という。)は、その質入制限の定めがされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった質権者その他の第三者に対抗することができる。
受益権の質入れの効果
第九十七条
受益権を目的とする質権は、次に掲げる金銭等(金銭その他の財産をいう。以下この条及び次条において同じ。)について存在する。
- 一当該受益権を有する受益者が受託者から信託財産に係る給付として受けた金銭等
- 二第百三条第六項に規定する受益権取得請求によって当該受益権を有する受益者が受ける金銭等
- 三信託の変更による受益権の併合又は分割によって当該受益権を有する受益者が受ける金銭等
- 四信託の併合又は分割(信託の併合又は信託の分割をいう。以下同じ。)によって当該受益権を有する受益者が受ける金銭等
- 五前各号に掲げるもののほか、当該受益権を有する受益者が当該受益権に代わるものとして受ける金銭等
第九十八条
受益権の質権者は、前条の金銭等(金銭に限る。)を受領し、他の債権者に先立って自己の債権の弁済に充てることができる。
- 2前項の債権の弁済期が到来していないときは、受益権の質権者は、受託者に同項に規定する金銭等に相当する金額を供託させることができる。この場合において、質権は、その供託金について存在する。
第九十九条
受益者は、受託者に対し、受益権を放棄する旨の意思表示をすることができる。ただし、受益者が信託行為の当事者である場合は、この限りでない。
- 2受益者は、前項の規定による意思表示をしたときは、当初から受益権を有していなかったものとみなす。ただし、第三者の権利を害することはできない。
受益債権に係る受託者の責任
第百条
受益債権に係る債務については、受託者は、信託財産に属する財産のみをもってこれを履行する責任を負う。
受益債権と信託債権との関係
第百一条
受益債権は、信託債権に後れる。
受益債権の期間の制限
第百二条
受益債権の消滅時効は、次項及び第三項に定める事項を除き、債権の消滅時効の例による。
- 2受益債権の消滅時効は、受益者が受益者としての指定を受けたことを知るに至るまでの間(受益者が現に存しない場合にあっては、信託管理人が選任されるまでの間)は、進行しない。
- 3受益債権の消滅時効は、次に掲げる場合に限り、援用することができる。
- 一受託者が、消滅時効の期間の経過後、遅滞なく、受益者に対し受益債権の存在及びその内容を相当の期間を定めて通知し、かつ、受益者からその期間内に履行の請求を受けなかったとき。
- 二消滅時効の期間の経過時において受益者の所在が不明であるとき、その他信託行為の定め、受益者の状況、関係資料の滅失その他の事情に照らして、受益者に対し前号の規定による通知をしないことについて正当な理由があるとき。
- 4受益債権は、これを行使することができる時から二十年を経過したときは、消滅する。
受益権取得請求
第百三条
次に掲げる事項に係る信託の変更(第三項において「重要な信託の変更」という。)がされる場合には、これにより損害を受けるおそれのある受益者は、受託者に対し、自己の有する受益権を公正な価格で取得することを請求することができる。ただし、第一号又は第二号に掲げる事項に係る信託の変更がされる場合にあっては、これにより損害を受けるおそれのあることを要しない。
- 一信託の目的の変更
- 二受益権の譲渡の制限
- 三受託者の義務の全部又は一部の減免(当該減免について、その範囲及びその意思決定の方法につき信託行為に定めがある場合を除く。)
- 四受益債権の内容の変更(当該内容の変更について、その範囲及びその意思決定の方法につき信託行為に定めがある場合を除く。)
- 五信託行為において定めた事項
- 2信託の併合又は分割がされる場合には、これらにより損害を受けるおそれのある受益者は、受託者に対し、自己の有する受益権を公正な価格で取得することを請求することができる。ただし、前項第一号又は第二号に掲げる事項に係る変更を伴う信託の併合又は分割がされる場合にあっては、これらにより損害を受けるおそれのあることを要しない。
- 3前二項の受益者が、重要な信託の変更又は信託の併合若しくは信託の分割(以下この章において「重要な信託の変更等」という。)の意思決定に関与し、その際に当該重要な信託の変更等に賛成する旨の意思を表示したときは、前二項の規定は、当該受益者については、適用しない。
- 4受託者は、重要な信託の変更等の意思決定の日から二十日以内に、受益者に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。
- 一重要な信託の変更等をする旨
- 二重要な信託の変更等がその効力を生ずる日(次条第一項において「効力発生日」という。)
- 三重要な信託の変更等の中止に関する条件を定めたときは、その条件
- 5前項の規定による通知は、官報による公告をもって代えることができる。
- 6第一項又は第二項の規定による請求(以下この款において「受益権取得請求」という。)は、第四項の規定による通知又は前項の規定による公告の日から二十日以内に、その受益権取得請求に係る受益権の内容を明らかにしてしなければならない。
- 7受益権取得請求をした受益者は、受託者の承諾を得た場合に限り、その受益権取得請求を撤回することができる。
- 8重要な信託の変更等が中止されたときは、受益権取得請求は、その効力を失う。
受益権の価格の決定等
第百四条
受益権取得請求があった場合において、受益権の価格の決定について、受託者と受益者との間に協議が調ったときは、受託者は、受益権取得請求の日から六十日を経過する日(その日までに効力発生日が到来していない場合にあっては、効力発生日)までにその支払をしなければならない。
- 2受益権の価格の決定について、受益権取得請求の日から三十日以内に協議が調わないときは、受託者又は受益者は、その期間の満了の日後三十日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる。
- 3裁判所は、前項の規定により価格の決定をする場合には、同項の申立てをすることができる者の陳述を聴かなければならない。
- 4第二項の申立てについての裁判には、理由を付さなければならない。
- 5第二項の規定による価格の決定の裁判に対しては、申立人及び同項の申立てをすることができる者に限り、即時抗告をすることができる。
- 6前項の即時抗告は、執行停止の効力を有する。
- 7前条第七項の規定にかかわらず、第二項に規定する場合において、受益権取得請求の日から六十日以内に同項の申立てがないときは、その期間の満了後は、受益者は、いつでも、受益権取得請求を撤回することができる。
- 8第一項の受託者は、裁判所の決定した価格に対する同項の期間の満了の日後の利息をも支払わなければならない。
- 9受託者は、受益権の価格の決定があるまでは、受益者に対し、当該受託者が公正な価格と認める額を支払うことができる。
- 10受益権取得請求に係る受託者による受益権の取得は、当該受益権の価格に相当する金銭の支払の時に、その効力を生ずる。
- 11受益証券(第百八十五条第一項に規定する受益証券をいう。以下この章において同じ。)が発行されている受益権について受益権取得請求があったときは、当該受益証券と引換えに、その受益権取得請求に係る受益権の価格に相当する金銭を支払わなければならない。
- 12受益権取得請求に係る債務については、受託者は、信託財産に属する財産のみをもってこれを履行する責任を負う。ただし、信託行為又は当該重要な信託の変更等の意思決定において別段の定めがされたときは、その定めるところによる。
- 13前条第一項又は第二項の規定により受託者が受益権を取得したときは、その受益権は、消滅する。ただし、信託行為又は当該重要な信託の変更等の意思決定において別段の定めがされたときは、その定めるところによる。
第百五条
受益者が二人以上ある信託における受益者の意思決定(第九十二条各号に掲げる権利の行使に係るものを除く。)は、すべての受益者の一致によってこれを決する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
- 2前項ただし書の場合において、信託行為に受益者集会における多数決による旨の定めがあるときは、次款の定めるところによる。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
- 3第一項ただし書又は前項の規定にかかわらず、第四十二条の規定による責任の免除に係る意思決定の方法についての信託行為の定めは、次款の定めるところによる受益者集会における多数決による旨の定めに限り、その効力を有する。
- 4第一項ただし書及び前二項の規定は、次に掲げる責任の免除については、適用しない。
- 一第四十二条の規定による責任の全部の免除
- 二第四十二条第一号の規定による責任(受託者がその任務を行うにつき悪意又は重大な過失があった場合に生じたものに限る。)の一部の免除
- 三第四十二条第二号の規定による責任の一部の免除
受益者集会の招集
第百六条
受益者集会は、必要がある場合には、いつでも、招集することができる。
- 2受益者集会は、受託者(信託監督人が現に存する場合にあっては、受託者又は信託監督人)が招集する。
受益者による招集の請求
第百七条
受益者は、受託者(信託監督人が現に存する場合にあっては、受託者又は信託監督人)に対し、受益者集会の目的である事項及び招集の理由を示して、受益者集会の招集を請求することができる。
- 2次に掲げる場合において、信託財産に著しい損害を生ずるおそれがあるときは、前項の規定による請求をした受益者は、受益者集会を招集することができる。
- 一前項の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合
- 二前項の規定による請求があった日から八週間以内の日を受益者集会の日とする受益者集会の招集の通知が発せられない場合
受益者集会の招集の決定
第百八条
受益者集会を招集する者(以下この款において「招集者」という。)は、受益者集会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。
- 一受益者集会の日時及び場所
- 二受益者集会の目的である事項があるときは、当該事項
- 三受益者集会に出席しない受益者が電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。以下この款において同じ。)によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
- 四前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
受益者集会の招集の通知
第百九条
受益者集会を招集するには、招集者は、受益者集会の日の二週間前までに、知れている受益者及び受託者(信託監督人が現に存する場合にあっては、知れている受益者、受託者及び信託監督人)に対し、書面をもってその通知を発しなければならない。
- 2招集者は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、同項の通知を受けるべき者の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。この場合において、当該招集者は、同項の書面による通知を発したものとみなす。
- 3前二項の通知には、前条各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
- 4無記名式の受益証券が発行されている場合において、受益者集会を招集するには、招集者は、受益者集会の日の三週間前までに、受益者集会を招集する旨及び前条各号に掲げる事項を官報により公告しなければならない。
受益者集会参考書類及び議決権行使書面の交付等
第百十条
招集者は、前条第一項の通知に際しては、法務省令で定めるところにより、知れている受益者に対し、議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類(以下この条において「受益者集会参考書類」という。)及び受益者が議決権を行使するための書面(以下この款において「議決権行使書面」という。)を交付しなければならない。
- 2招集者は、前条第二項の承諾をした受益者に対し同項の電磁的方法による通知を発するときは、前項の規定による受益者集会参考書類及び議決権行使書面の交付に代えて、これらの書類に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。ただし、受益者の請求があったときは、これらの書類を当該受益者に交付しなければならない。
- 3招集者は、前条第四項の規定による公告をした場合において、受益者集会の日の一週間前までに無記名受益権(無記名式の受益証券が発行されている受益権をいう。第八章において同じ。)の受益者の請求があったときは、直ちに、受益者集会参考書類及び議決権行使書面を当該受益者に交付しなければならない。
- 4招集者は、前項の規定による受益者集会参考書類及び議決権行使書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、受益者の承諾を得て、これらの書類に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該招集者は、同項の規定によるこれらの書類の交付をしたものとみなす。
第百十一条
招集者は、第百八条第三号に掲げる事項を定めた場合には、第百九条第二項の承諾をした受益者に対する電磁的方法による通知に際して、法務省令で定めるところにより、受益者に対し、議決権行使書面に記載すべき事項を当該電磁的方法により提供しなければならない。
- 2招集者は、第百八条第三号に掲げる事項を定めた場合において、第百九条第二項の承諾をしていない受益者から受益者集会の日の一週間前までに議決権行使書面に記載すべき事項の電磁的方法による提供の請求があったときは、法務省令で定めるところにより、直ちに、当該受益者に対し、当該事項を電磁的方法により提供しなければならない。
受益者の議決権
第百十二条
受益者は、受益者集会において、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定めるものに応じて、議決権を有する。
- 一各受益権の内容が均等である場合 受益権の個数
- 二前号に掲げる場合以外の場合 受益者集会の招集の決定の時における受益権の価格
- 2前項の規定にかかわらず、受益権が当該受益権に係る信託の信託財産に属するときは、受託者は、当該受益権については、議決権を有しない。
受益者集会の決議
第百十三条
受益者集会の決議は、議決権を行使することができる受益者の議決権の過半数を有する受益者が出席し、出席した当該受益者の議決権の過半数をもって行う。
- 2前項の規定にかかわらず、次に掲げる事項に係る受益者集会の決議は、当該受益者集会において議決権を行使することができる受益者の議決権の過半数を有する受益者が出席し、出席した当該受益者の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって行わなければならない。
- 一第四十二条の規定による責任の免除(第百五条第四項各号に掲げるものを除く。)
- 二第百三十六条第一項第一号に規定する合意
- 三第百四十三条第一項第一号に規定する合意
- 四第百四十九条第一項若しくは第二項第一号に規定する合意又は同条第三項に規定する意思表示
- 五第百五十一条第一項又は第二項第一号に規定する合意
- 六第百五十五条第一項又は第二項第一号に規定する合意
- 七第百五十九条第一項又は第二項第一号に規定する合意
- 八第百六十四条第一項に規定する合意
- 3前二項の規定にかかわらず、第百三条第一項第二号から第四号までに掲げる事項(同号に掲げる事項にあっては、受益者間の権衡に変更を及ぼすものを除く。)に係る重要な信託の変更等に係る受益者集会の決議は、当該受益者集会において議決権を行使することができる受益者の半数以上であって、当該受益者の議決権の三分の二以上に当たる多数をもって行わなければならない。
- 4前三項の規定にかかわらず、第百三条第一項第一号又は第四号に掲げる事項(同号に掲げる事項にあっては、受益者間の権衡に変更を及ぼすものに限る。)に係る重要な信託の変更等に係る受益者集会の決議は、総受益者の半数以上であって、総受益者の議決権の四分の三以上に当たる多数をもって行わなければならない。
- 5受益者集会は、第百八条第二号に掲げる事項以外の事項については、決議をすることができない。
議決権の代理行使
第百十四条
受益者は、代理人によってその議決権を行使することができる。この場合においては、当該受益者又は代理人は、代理権を証明する書面を招集者に提出しなければならない。
- 2前項の代理権の授与は、受益者集会ごとにしなければならない。
- 3第一項の受益者又は代理人は、代理権を証明する書面の提出に代えて、政令で定めるところにより、招集者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該受益者又は代理人は、当該書面を提出したものとみなす。
- 4受益者が第百九条第二項の承諾をした者である場合には、招集者は、正当な理由がなければ、前項の承諾をすることを拒んではならない。
書面による議決権の行使
第百十五条
受益者集会に出席しない受益者は、書面によって議決権を行使することができる。
- 2書面による議決権の行使は、議決権行使書面に必要な事項を記載し、法務省令で定める時までに当該記載をした議決権行使書面を招集者に提出して行う。
- 3前項の規定により書面によって行使した議決権は、出席した議決権者の行使した議決権とみなす。
電磁的方法による議決権の行使
第百十六条
電磁的方法による議決権の行使は、政令で定めるところにより、招集者の承諾を得て、法務省令で定める時までに議決権行使書面に記載すべき事項を、電磁的方法により当該招集者に提供して行う。
- 2受益者が第百九条第二項の承諾をした者である場合には、招集者は、正当な理由がなければ、前項の承諾をすることを拒んではならない。
- 3第一項の規定により電磁的方法によって行使した議決権は、出席した議決権者の行使した議決権とみなす。
議決権の不統一行使
第百十七条
受益者は、その有する議決権を統一しないで行使することができる。この場合においては、受益者集会の日の三日前までに、招集者に対しその旨及びその理由を通知しなければならない。
- 2招集者は、前項の受益者が他人のために受益権を有する者でないときは、当該受益者が同項の規定によりその有する議決権を統一しないで行使することを拒むことができる。
受託者の出席等
第百十八条
受託者(法人である受託者にあっては、その代表者又は代理人。次項において同じ。)は、受益者集会に出席し、又は書面により意見を述べることができる。
- 2受益者集会又は招集者は、必要があると認めるときは、受託者に対し、その出席を求めることができる。この場合において、受益者集会にあっては、これをする旨の決議を経なければならない。
延期又は続行の決議
第百十九条
受益者集会においてその延期又は続行について決議があった場合には、第百八条及び第百九条の規定は、適用しない。
議事録
第百二十条
受益者集会の議事については、招集者は、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。
受益者集会の決議の効力
第百二十一条
受益者集会の決議は、当該信託のすべての受益者に対してその効力を有する。
受益者集会の費用の負担
第百二十二条
受益者集会に関する必要な費用を支出した者は、受託者に対し、その償還を請求することができる。
- 2前項の規定による請求に係る債務については、受託者は、信託財産に属する財産のみをもってこれを履行する責任を負う。
信託管理人の選任
第百二十三条
信託行為においては、受益者が現に存しない場合に信託管理人となるべき者を指定する定めを設けることができる。
- 2信託行為に信託管理人となるべき者を指定する定めがあるときは、利害関係人は、信託管理人となるべき者として指定された者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に就任の承諾をするかどうかを確答すべき旨を催告することができる。ただし、当該定めに停止条件又は始期が付されているときは、当該停止条件が成就し、又は当該始期が到来した後に限る。
- 3前項の規定による催告があった場合において、信託管理人となるべき者として指定された者は、同項の期間内に委託者(委託者が現に存しない場合にあっては、受託者)に対し確答をしないときは、就任の承諾をしなかったものとみなす。
- 4受益者が現に存しない場合において、信託行為に信託管理人に関する定めがないとき、又は信託行為の定めにより信託管理人となるべき者として指定された者が就任の承諾をせず、若しくはこれをすることができないときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、信託管理人を選任することができる。
- 5前項の規定による信託管理人の選任の裁判があったときは、当該信託管理人について信託行為に第一項の定めが設けられたものとみなす。
- 6第四項の申立てについての裁判には、理由を付さなければならない。
- 7第四項の規定による信託管理人の選任の裁判に対しては、委託者若しくは受託者又は既に存する信託管理人に限り、即時抗告をすることができる。
- 8前項の即時抗告は、執行停止の効力を有する。
信託管理人の資格
第百二十四条
次に掲げる者は、信託管理人となることができない。
- 一未成年者
- 二当該信託の受託者である者
信託管理人の権限
第百二十五条
信託管理人は、受益者のために自己の名をもって受益者の権利に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
- 2二人以上の信託管理人があるときは、これらの者が共同してその権限に属する行為をしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
- 3この法律の規定により受益者に対してすべき通知は、信託管理人があるときは、信託管理人に対してしなければならない。
信託管理人の義務
第百二十六条
信託管理人は、善良な管理者の注意をもって、前条第一項の権限を行使しなければならない。
- 2信託管理人は、受益者のために、誠実かつ公平に前条第一項の権限を行使しなければならない。
信託管理人の費用等及び報酬
第百二十七条
信託管理人は、その事務を処理するのに必要と認められる費用及び支出の日以後におけるその利息を受託者に請求することができる。
- 2信託管理人は、次の各号に掲げる場合には、当該各号に定める損害の額について、受託者にその賠償を請求することができる。
- 一信託管理人がその事務を処理するため自己に過失なく損害を受けた場合 当該損害の額
- 二信託管理人がその事務を処理するため第三者の故意又は過失によって損害を受けた場合(前号に掲げる場合を除く。) 当該第三者に対し賠償を請求することができる額
- 3信託管理人は、商法第五百十二条の規定の適用がある場合のほか、信託行為に信託管理人が報酬を受ける旨の定めがある場合に限り、受託者に報酬を請求することができる。
- 4前三項の規定による請求に係る債務については、受託者は、信託財産に属する財産のみをもってこれを履行する責任を負う。
- 5第三項の場合には、報酬の額は、信託行為に報酬の額又は算定方法に関する定めがあるときはその定めるところにより、その定めがないときは相当の額とする。
- 6裁判所は、第百二十三条第四項の規定により信託管理人を選任した場合には、信託管理人の報酬を定めることができる。
- 7前項の規定による信託管理人の報酬の裁判があったときは、当該信託管理人について信託行為に第三項の定め及び第五項の報酬の額に関する定めがあったものとみなす。
- 8第六項の規定による信託管理人の報酬の裁判をする場合には、受託者及び信託管理人の陳述を聴かなければならない。
- 9第六項の規定による信託管理人の報酬の裁判に対しては、受託者及び信託管理人に限り、即時抗告をすることができる。
信託管理人の任務の終了
第百二十八条
第五十六条の規定は、信託管理人の任務の終了について準用する。この場合において、同条第一項第五号中「次条」とあるのは「第百二十八条第二項において準用する次条」と、同項第六号中「第五十八条」とあるのは「第百二十八条第二項において準用する第五十八条」と読み替えるものとする。
- 2第五十七条の規定は信託管理人の辞任について、第五十八条の規定は信託管理人の解任について、それぞれ準用する。
新信託管理人の選任等
第百二十九条
第六十二条の規定は、前条第一項において準用する第五十六条第一項各号の規定により信託管理人の任務が終了した場合における新たな信託管理人(次項において「新信託管理人」という。)の選任について準用する。
- 2新信託管理人が就任した場合には、信託管理人であった者は、遅滞なく、新信託管理人がその事務の処理を行うのに必要な事務の引継ぎをしなければならない。
- 3前項の信託管理人であった者は、受益者が存するに至った後においてその受益者となった者を知ったときは、遅滞なく、当該受益者となった者に対しその事務の経過及び結果を報告しなければならない。
信託管理人による事務の処理の終了等
第百三十条
信託管理人による事務の処理は、次に掲げる事由により終了する。ただし、第二号に掲げる事由による場合にあっては、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
- 一受益者が存するに至ったこと。
- 二委託者が信託管理人に対し事務の処理を終了する旨の意思表示をしたこと。
- 三信託行為において定めた事由
- 2前項の規定により信託管理人による事務の処理が終了した場合には、信託管理人であった者は、遅滞なく、受益者に対しその事務の経過及び結果を報告しなければならない。ただし、受益者が存するに至った後においてその受益者となった者を知った場合に限る。
信託監督人の選任
第百三十一条
信託行為においては、受益者が現に存する場合に信託監督人となるべき者を指定する定めを設けることができる。
- 4受益者が受託者の監督を適切に行うことができない特別の事情がある場合において、信託行為に信託監督人に関する定めがないとき、又は信託行為の定めにより信託監督人となるべき者として指定された者が就任の承諾をせず、若しくはこれをすることができないときは、裁判所は、利害関係人の申立てにより、信託監督人を選任することができる。
- 5前項の規定による信託監督人の選任の裁判があったときは、当該信託監督人について信託行為に第一項の定めが設けられたものとみなす。
- 6第四項の申立てについての裁判には、理由を付さなければならない。
- 7第四項の規定による信託監督人の選任の裁判に対しては、委託者、受託者若しくは受益者又は既に存する信託監督人に限り、即時抗告をすることができる。
- 8前項の即時抗告は、執行停止の効力を有する。
信託監督人の権限
第百三十二条
信託監督人は、受益者のために自己の名をもって第九十二条各号(第十七号、第十八号、第二十一号及び第二十三号を除く。)に掲げる権利に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
- 2二人以上の信託監督人があるときは、これらの者が共同してその権限に属する行為をしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
信託監督人の義務
第百三十三条
信託監督人は、善良な管理者の注意をもって、前条第一項の権限を行使しなければならない。
- 2信託監督人は、受益者のために、誠実かつ公平に前条第一項の権限を行使しなければならない。
信託監督人の任務の終了
第百三十四条
第五十六条の規定は、信託監督人の任務の終了について準用する。この場合において、同条第一項第五号中「次条」とあるのは「第百三十四条第二項において準用する次条」と、同項第六号中「第五十八条」とあるのは「第百三十四条第二項において準用する第五十八条」と読み替えるものとする。
- 2第五十七条の規定は信託監督人の辞任について、第五十八条の規定は信託監督人の解任について、それぞれ準用する。
新信託監督人の選任等
第百三十五条
第六十二条の規定は、前条第一項において準用する第五十六条第一項各号の規定により信託監督人の任務が終了した場合における新たな信託監督人(次項において「新信託監督人」という。)の選任について準用する。
- 2新信託監督人が就任した場合には、信託監督人であった者は、遅滞なく、受益者に対しその事務の経過及び結果を報告し、新信託監督人がその事務の処理を行うのに必要な事務の引継ぎをしなければならない。
信託監督人による事務の処理の終了等
第百三十六条
信託監督人による事務の処理は、信託の清算の結了のほか、次に掲げる事由により終了する。ただし、第一号に掲げる事由による場合にあっては、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
- 一委託者及び受益者が信託監督人による事務の処理を終了する旨の合意をしたこと。
- 二信託行為において定めた事由
- 2前項の規定により信託監督人による事務の処理が終了した場合には、信託監督人であった者は、遅滞なく、受益者に対しその事務の経過及び結果を報告しなければならない。
- 3委託者が現に存しない場合には、第一項第一号の規定は、適用しない。
信託管理人に関する規定の準用
第百三十七条
第百二十四条及び第百二十七条の規定は、信託監督人について準用する。この場合において、同条第六項中「第百二十三条第四項」とあるのは、「第百三十一条第四項」と読み替えるものとする。
受益者代理人の選任
第百三十八条
信託行為においては、その代理する受益者を定めて、受益者代理人となるべき者を指定する定めを設けることができる。
- 2信託行為に受益者代理人となるべき者を指定する定めがあるときは、利害関係人は、受益者代理人となるべき者として指定された者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に就任の承諾をするかどうかを確答すべき旨を催告することができる。ただし、当該定めに停止条件又は始期が付されているときは、当該停止条件が成就し、又は当該始期が到来した後に限る。
- 3前項の規定による催告があった場合において、受益者代理人となるべき者として指定された者は、同項の期間内に委託者(委託者が現に存しない場合にあっては、受託者)に対し確答をしないときは、就任の承諾をしなかったものとみなす。
受益者代理人の権限等
第百三十九条
受益者代理人は、その代理する受益者のために当該受益者の権利(第四十二条の規定による責任の免除に係るものを除く。)に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
- 2受益者代理人がその代理する受益者のために裁判上又は裁判外の行為をするときは、その代理する受益者の範囲を示せば足りる。
- 3一人の受益者につき二人以上の受益者代理人があるときは、これらの者が共同してその権限に属する行為をしなければならない。ただし、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
- 4受益者代理人があるときは、当該受益者代理人に代理される受益者は、第九十二条各号に掲げる権利及び信託行為において定めた権利を除き、その権利を行使することができない。
受益者代理人の義務
第百四十条
受益者代理人は、善良な管理者の注意をもって、前条第一項の権限を行使しなければならない。
- 2受益者代理人は、その代理する受益者のために、誠実かつ公平に前条第一項の権限を行使しなければならない。
受益者代理人の任務の終了
第百四十一条
第五十六条の規定は、受益者代理人の任務の終了について準用する。この場合において、同条第一項第五号中「次条」とあるのは「第百四十一条第二項において準用する次条」と、同項第六号中「第五十八条」とあるのは「第百四十一条第二項において準用する第五十八条」と読み替えるものとする。
- 2第五十七条の規定は受益者代理人の辞任について、第五十八条の規定は受益者代理人の解任について、それぞれ準用する。
新受益者代理人の選任等
第百四十二条
第六十二条の規定は、前条第一項において準用する第五十六条第一項各号の規定により受益者代理人の任務が終了した場合における新たな受益者代理人(次項において「新受益者代理人」という。)の選任について準用する。この場合において、第六十二条第二項及び第四項中「利害関係人」とあるのは、「委託者又は受益者代理人に代理される受益者」と読み替えるものとする。
- 2新受益者代理人が就任した場合には、受益者代理人であった者は、遅滞なく、その代理する受益者に対しその事務の経過及び結果を報告し、新受益者代理人がその事務の処理を行うのに必要な事務の引継ぎをしなければならない。
受益者代理人による事務の処理の終了等
第百四十三条
受益者代理人による事務の処理は、信託の清算の結了のほか、次に掲げる事由により終了する。ただし、第一号に掲げる事由による場合にあっては、信託行為に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
- 一委託者及び受益者代理人に代理される受益者が受益者代理人による事務の処理を終了する旨の合意をしたこと。
- 二信託行為において定めた事由
- 2前項の規定により受益者代理人による事務の処理が終了した場合には、受益者代理人であった者は、遅滞なく、その代理した受益者に対しその事務の経過及び結果を報告しなければならない。
- 3委託者が現に存しない場合には、第一項第一号の規定は、適用しない。
信託管理人に関する規定の準用
第百四十四条
第百二十四条及び第百二十七条第一項から第五項までの規定は、受益者代理人について準用する。